栃木・宇都宮の相続手続何でも相談室室長の石川です。
相続に関するやや細かい知識を書いていきます。
今回は「遺留分」に関してです。
遺留分は一定の範囲の相続人に認められており、
遺言等で相続する財産が何もない状態にされてしまったとしても、
一定の範囲で財産を受け取ることができます。
遺留分制度は、相続人に遺言等によっても奪われない権利を認めて、
相続人を保護することを目的としています。
相続人のうちの特定の一人や全くの赤の他人に
全財産を相続(遺贈)されてしまうと
財産をもらえなかった相続人の今後の生活が
大いに脅かされる可能性があります。
そのような事態を避けるために遺留分が認められています。
遺留分の規定によって覆せるのは遺言による遺贈だけではありません。
これ以外に一定の生前贈与も含まれます。
相続開始から遡って1年以内の贈与によって流失した財産も
遺留分の対象になります。
さらに1年以上前の贈与であっても、
その当事者双方が遺留分権者に損害を与えることを知っていた時には
遺留分の対象になります。
また婚姻、養子縁組のために、
あるいは生計の資本として贈与された財産も遺留分の対象になります。
遺留分を有している相続人は配偶者、子、直系尊族(父母、祖父母)です。
兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分は、直系尊族だけが相続人の場合、相続財産の3分の1、
それ以外の人が相続人の場合には2分の1です。
遺留分を有している相続人が複数いる場合には、
法定相続分で分配します。
ただし、遺留分を侵害する遺贈や生前贈与は、それ自体は有効です。
遺留分を侵害された相続人は遺留分減殺請求を行って初めて、
遺留分を侵害する遺贈、贈与の一部が無効になり、
遺留分に相当する財産を取り戻すことができます。
遺留分減殺請求のやり方は意思表示をするだけで足り、
必ずしも訴訟による必要はありません。
具体的には内容証明郵便によって請求し、
その後に協議を行うのが通例です。
話し合いで解決しなかった場合に調停、
調停でも解決しなければ訴訟に移行します。
遺留分減殺請求を行う内容証明郵便には
遺留分の減殺を請求する旨書いてあれば足り、
支払うべき金額や不動産の持分等は記載する必要はありません。
一方、調停や訴訟によって遺留分減殺請求を行う場合には、
支払うべき金額や不動産の持分を明示しなくてはなりません。
遺留分減殺請求の請求権は、相続開始及び遺留分を侵害する遺贈、
生前贈与があったことを知った時から
1年以内に行使しないと時効により消滅してしまいます。
相続開始から10年経過したときも同様です。
遺留分減殺請求権が行使されると
遺留分を侵害する遺贈や贈与は
遺留分を侵害する範囲で当然に効力を失います。
以上、栃木・宇都宮の相続手続何でも相談室でした。