栃木・宇都宮の相続手続き何でも相談室室長の石川です。
今回は「遺言書が2通出てきた場合」についてです。
亡くなった人の遺言が複数出てきてしまった場合、
どちらの遺言に従えばよいのでしょうか?
それぞれの遺言書の内容が矛盾する場合、
基本的には遺言書の形式に関わりなく
(自筆証書遺言と公正証書遺言が出てきた場合は
公正証書遺言が優先するとかいうことはなく)、
日付が一番新しい(死亡日に近い)遺言書に書いてあることが優先します。
民法は「前の遺言が後の遺言と内容が違っているときには、
その書いてある部分については後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす」
と定めています。
たとえば、前の遺言書には「自宅は長男に相続させる」と書いてあり、
後の遺言書には「自宅は二男に相続させる」と書いてあった場合には
自宅は二男が相続することになります。
また、前の遺言書には「箱根の別荘を相続させる」と書いてあり、
後の遺言書には「軽井沢の別荘を相続させる」と書いてあった場合には、
軽井沢の別荘だけを相続できます。
では、前の遺言書に「全財産を長男に相続させる」と書いてあり、
後の遺言書には「自宅及び足利銀行の預金を二男に相続させる」と
書いてあった場合、
二つの遺言書の日付が近接していれば、
二男は自宅と足利銀行の預金を相続し、
それ以外の遺産を長男が相続すると解釈できます。
しかし、二つの遺言書の日付が相当期間離れていて、
かつ長男と被相続人が仲違いしていたような事情があった場合、
前の遺言は全面撤回され、
被相続人は長男に財産を相続させるつもりは全くなくなっていたと
解釈される可能性があります。
遺言作成する際に公正証書遺言の方法を選択しておけば、
この手のトラブルは確実に減らせます。
少しの手間を惜しんで、公正証書遺言を選択せずに
自筆証書遺言を選択することは、
後々このようなトラブルを誘発する可能性があると言わざるを得ません。
以上、栃木・宇都宮の相続手続何でも相談室でした。
2018.12.18記
自筆証書遺言は遺言する人が自分の好きなように書き残した遺言です。
「そういうあいまいな表現をすると誤解をまねきやすい」等の事前アドバイスはまったくありません。
ご本人は自分の遺志を書き残したことに(自己)満足なのかも知れませんが、
遺言を遺された相続人はたまったものではありません。
せっかく遺言するのなら後々のトラブルの種なんて残すべきではありません。
どうせ遺言を遺すなら安心安全な公正証書遺言の作成をお勧めします。
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