栃木・宇都宮の相続手続何でも相談室室長の石川です。
相続に関するやや細かい知識を書いていきます。
今回は「遺言と異なる遺産分割」に関してです。
遺言が存在する場合、
遺言内容と異なる遺産分けを行うことは可能か?
あらかじめ遺言の存在を認識していた場合
相続人全員(代襲相続人や包括受遺者を含む)が
遺言の内容を知った上で、相続人全員が合意のもとに、
遺言と異なる内容の遺産分割を行うことは可能です。
ただし、遺言で特定財産を第三者に遺贈することが
規定されている場合には
その特定財産は第三者のものになりますし、
また遺言執行者の定めがある場合には、
遺言の執行を行ったら得られたであろう報酬相当額について
損害賠償請求を受ける可能性があります。
遺産分割後に遺言が発見された場合
①一部の相続人が遺言書を隠匿していた場合
相続人が遺言書を隠匿した場合、その相続人は相続欠格となります。
相続人の地位を失います。
相続人の地位にない者が参加した遺産分割協議は無効です。
この場合は、無効な遺産分割協議に基づき行われた相続手続きを
取り消して、発見された遺言書の内容にしたがった相続手続きを
やり直すか、相続欠格者を除いた相続人全員であらためて遺産分割協議を
やり直します。
②相続人全員が遺言書の存在や内容を知らなかったとき
この場合、遺産分割の結果が遺言による相続よりも
有利になる相続人、不利になる相続人が出てきます。
遺言による相続より不利になる相続人としては、
「もし遺言の内容を知っていたとすれば、
このような遺産分割には応じなかった」
と主張するでしょう。
遺言には自分が全財産を相続できることが記載されているのに、
遺言書の存在が明らかでなかったために、
法定相続分での遺産分割協議に応じてしまった場合に
錯誤による無効の主張を認めた判例があります。
③遺言によれば他に遺産分割協議に加わるべき者が存在するにもかかわらず、
その者を除外して遺産分割協議を行っていたとき
遺産分割協議は法定相続人だけで行ってしまったものの、
後に発見された遺言では第三者に対して包括遺贈すること
(財産を特定することなく、一定の割合で財産を遺贈すること)
が規定されていた場合が考えられます。
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有しており、
遺産分割に加わるべき当事者です。
このような遺産分割協議は当事者を欠いた遺産分割協議であり、
無効です。
以上、栃木・宇都宮の相続手続何でも相談室でした。