改正法の施行(効力発生)は2023年ごろが予定されています。
【改正法の要点 その1】
正確な説明ではありませんが、
あえて分かりやすく説明をすると
「土地や建物の所有者が
お亡くなりになってから3年以内に
相続登記を申請することが
義務化されました」
【改正法の要点 その2】
今回の不動産登記改正により、
はるか昔のご先祖様の相続についても
登記申請義務を負います。
以下、具体的に解説いたします。
1 改正の背景と目的
所有者不明な不動産により引き起こされる弊害は多岐にわたります。
不動産の利活用や売買等の取引の大きな妨げになるほか、
公共事業の停滞を招いたり、
産業廃棄物の不法投棄の現場になったり等、
例を挙げればきりがりません。
所有者不明な不動産を発生させる大きな原因の一つが、
相続登記申請の放置にあると言われています。
今回の不動産登記法の改正は、
所有者不明な不動産をなくし、またはその発生を予防し、
所有者不明な不動産に起因する数々の「負の問題」の
解決につなげることを目的としています。
2 相続登記等の申請の義務付け
(1)所有権の登記名義人が死亡した場合における登記の申請の義務付け
(改正不動産登記法76条の2①)
①相続により所有権を取得した者に対して、
自分のために相続の開始があったことを知り、
かつ自分が当該不動産の所有権を取得したことを
知った日から3年以内に、所有権移転登記(法定相続分での相続登記)
を申請する義務が課されました(同条①)。
②法定相続分での相続登記がされた後に遺産分割(遺産分け)が
あったときは、
当該遺産分割によって法定相続分を超えて所有権を取得した者に対して、
遺産分割の日から3年以内に遺産分割の結果について登記申請をする
義務が課されました(同条②)。
③遡及適用
①②の登記申請義務は改正不動産登記法施行日以前に発生した相続に
さかのぼって適用されます(改正不登法附則5条⑥)。
詳しくは4のところを参照してください。
3 相続登記等の申請義務違反の罰則(過料)
(不登法164条①)
相続登記等の登記申請義務を負っている者が
正当な理由がないのに登記申請義務を怠ったときは、
10万円以下の過料に処される可能性があります。
4 数次相続と相続登記申請の義務化との関係
数次相続は相続登記をする前に複数回の相続が発生した場合を言います。
例えば、祖父が亡くなったが祖父の相続に関する相続登記を行う前に
父親が死亡してしまったような場合です。
何代も相続登記を放置してしまっている場合に
今回の不動産登記改正がどのように影響するかについてです。
◎具体例
(遺産の分割は行われていません)
1回目の相続(法改正前に発生)
被相続人A(所有権登記名義人)
相続人B及びC
2回目の相続
(法改正後にAの相続登記未了の間にBが死亡)
被相続人B 相続人D及びE
D及びEは、Aが死亡した結果、
BがAの相続人となり、
さらにBが死亡した結果、
D及びE自身がBの相続人となった事実を知り、
かつ
2度の相続によりD及びEが不動産の所有権を取得したことを知った日、
又は
改正法施行日のいずれか遅い日から3年以内に、
AからB及びCへの所有権移転登記(法定相続分による相続登記)
及びB持分についてD及びEへの持分全部移転登記
(法定相続分による相続登記)を申請しなければなりません。
この例では、CにもAからB及びCへの所有権移転登記
(法定相続分による相続登記)の申請義務があります。
相続登記申請義務は改正不動産登記法附則5条6項により、
改正法施行日以前に開始した相続にもさかのぼって課されます。
相続登記申請の義務化は
「最初に」発生した相続にさかのぼって適用されます。
例えば最初に発生した相続が明治時代に発生した相続である場合、
その相続に関する相続登記を放置したままであるならば、
明治時代に発生した相続の相続登記を申請する義務が課されます。